公演日誌
『月を悉す』
皆さま、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
2024年度卒業公演『月を悉す』にて脚本・演出、そして明智光秀役を務めました水無瀬融です。
終幕から数日経ち、舞台もばらし終えて、徐々に終わったという実感が湧き上がってくるのを感じて指を動かしている次第です。
皆さま、『月を悉す』いかがでしたか。
これを読んでくださっている方は、観てくださった方が多いのかなと思います。少しでも皆様の心に刻まれたものがあれば幸いです。
さて、ここではちょっとした制作秘話と言いますか、裏話をしようかなと思います。
私がこの作品を考え始めたのは今年の3月ごろです。きっかけは昨年度の冬公演『ドッペル・クラウンとおもちゃ箱』終幕後、知人との会話でした。この公演で初めて演出を務めたのですが、お見送り時に「脚本もすごいですね…!水無瀬さんが書かれたんですよね?」と言われたのです。「あ、いや、脚本は違くて…」これがとにかく悔しかった。ーじゃあ俺がやるーと一念発起した次第です。こうして、これまでの人生で脚本はもちろん、創作物なるものを生み出したこともなかった私が脚本の執筆に着手することになります。実際、冬公演を作り上げていく中で、自分で描けたらもっと自由で、楽しくて、良いものができるだろうなと実感していたのも大きかったです。
このような流れで、私の就職活動が本格化した3月の傍ら、息抜きにストーリーを考え始めます。そして、就活を終えたのち、6月後半と7月を使って一気に執筆し、書き上げました。
もうひとつ、『月を悉す』にかけた私の個人的裏テーマを綴らせていただきます。(え、なんで?となるような唐突さですがお付き合いください。)
個人的裏テーマ。それは“演劇の力を少しでも多くの人に伝える“です。
昨今、映画が作品の主力媒体となり、舞台を観たことがあるひと、舞台が好きなひとが限りなく少なくなっていると言えます。実際、私も月光斜に入った3年前まで舞台を観たことはありませんでした。今となって改めて考えると恐ろしいことですね。(笑)
演劇なんて…と思っていた私が、こうして沼にハマっているわけですが、だからこそ演劇の魅力、演劇である意義についてたくさん考えてきました。
その結果、今の私が考える演劇のいちばんの魅力は“生きるエネルギーを伝える“ことにあるのかな、なんて思っています。演劇の最大の特徴は生であることです。生だからこそ、どれだけの人数が、どれだけの想いで、どれだけの時間と労力をかけて作品を作り上げたのか多少なりとも推し量ることができます。そして生だからこそ、役者や舞台効果等の演出が生み出すエネルギーを感じることができます。作品を通して人のエネルギーを感じることができる、これが演劇の魅力かななんて思うんです。私自身、観劇後は自分も頑張ろう、明日も頑張ろうと明日への活力をもらえます。これは演劇ならではだと思います。
月光斜のお客様のメイン層は大学生や地域の方など演劇にはあまり触れてこなかった方達です。(もちろん、観劇経験豊富なお客様もたくさんいらっしゃいますし、大歓迎です!)
ここで良い観劇体験ができれば、今後他の舞台にも足を運ぶことがあるかもしれない、あわよくば、演劇好きになるかもしれない。しがないいち学生劇団員ではありますが、だからこそできることがあると思います。私がハマった演劇を、その魅力をその力を少しでも多くの人に伝えたい、その結果がこの『月を悉す』です。この作品を通して少しでも演劇の力が皆さまにとどいいたらそれほど嬉しいことはありません。
さて、私もついに引退です。同時に芝居からも身を引きます。月光斜に入って演劇を始め、のめり込んできた3年間は私にとってピカピカそのものです。これもひとえに、共に走ってきた月光斜の仲間、そして観にきてくださった皆さまのおかげです。
この場を借りて、この3年間で演劇を通して関わった全ての皆さまに感謝を伝えさせていただきます。
本当に、本当にありがとうございました。
月光斜が、そして皆さまの月が満ちることを願って。
水無瀬融