公演日誌

2025-11-11 20:00:00

2025卒 〜Fin〜

どうも。

劇団月光斜54期、卒業公演では演出と舞台監督を務めさせていただいておりました、富士見谷と申します。

これで「フジミヤ」と読みます。既に卒団した身なので、覚えていただかなくて大丈夫です。

さて、公演後記ということで、冗長でつまらない話にはなりますが、お付き合いいただければと。

…………


私が演劇人生は、高校一年の春、演劇部への入部にてはじまりました。

私の高校では年に2回、7月と3月に大きな舞台がありました。
入部した当初は7人体制だった部も、7月の地区大会を終えた頃には先輩が引退し、私含め一年生三人のみとなりました。
それでも様々な機会に恵まれ、多様な団体や活動者に触れ、小さい公演を打ち、多くの学びと刺激を得る日々を送っていました。
演出の仕方をとある方より教わり、演出の世界の深淵に惹かれ、取り憑かれていました。

来る3月の合同発表会に向けて、私は脚本の執筆に臨んでいました。
様々な人の言葉を参考に、これまでのすべての経験を余す事なく活かし、憧れも野心もあらゆる感情を綯い交ぜに。
湯水の如く湧き出る「こうしたい」「ああしたい」を詰め込み、無尽蔵のアイデアを絞り出し。
それは今振り返れば、とても人に見せられたものではありませんが、その時の私にとって輝いて見えたものを詰め込んだ、宝箱のようにも思えます。

無理筋なのは百も承知。
演劇をはじめて一年にも満たない3人の高校生による大舞台。


それが新型コロナウイルスの流行により中止になりました。

最初は何も理解できませんでした。

2020年、1月。少しずつ報道で、その聞き慣れない文字列を目にするようになりはじめました。2年生の修学旅行は恙無く終えられました。

2月。だんだんと無視できないほどに世間で囁かれるようになりました。
そして下旬。合同発表会の中止が顧問から告げられました。

それからの数ヶ月。その公演に掛けていた熱を発散する宛はどこにも無く、ただ部屋に篭っていることしかできませんでした。

少しずつ、活動が再開できるようになってきても、いつまた休止になるかわからない恐怖が、常に付き纏っていました。
また同じような事態に陥った時に、私はどうなるだろうか。

元々は演劇は高校の3年間で終えるつもりでしたが、感染症が落ち着いた頃に、その憂いに苦しまずに済むようになってから、また再開しよう。
そうして演劇と距離を置くことにしました。


そして立命館大学への入学と同時に、劇団月光斜への入団へと至りました。
感染の流行もある程度落ち着いており、今度こそ思い切り演劇ができるだろう、と。

そんな中で2022年度、冬公演。学生会館で火事が発生し、公演は中止を決定。

2023年度、新歓公演。詳しい話は省きますが、新歓企画の規定違反で中止。先輩方から慣習としてずっと大丈夫だったと聞いていて、中止を告げられた時は晴天の霹靂に感じました。

…………

演劇の最大公約数を考えるとそれは、「舞台」と呼ばれる空間に、「役者」と呼ばれるものがいて、「演技」と呼ばれる行為をすることかと思います。
きっと最初期の「演劇」は、演出家も舞台監督も照明家もおらず、何も無いただの土地の一画を「舞台」と呼び「演技」していたのでしょう。
ただ、現代において「演劇」という呼ばれるものはそこから更に膨れ上がっており、幾らかの条件をクリアしなければいけなくなりました。

『パンドラの鐘』では戦争、特に太平洋戦争を示唆する内容が含まれていました。そして、論文の検閲等の言論や思想の統制が、特別高等警察にあたる者によって行われる描写がありました。

勿論それらは、演劇活動にとって妨げとなります。平和と自由があってはじめて演劇はつくられます。


こうして今、学生が集い、公演を打てているのもひとえに、今の日本は一定の平和と自由が保障されているおかげでしょう。

同じ演劇をしたい仲間が集まれていること。
多くのお客さんの前で公演を打てていること。
それが只事でない幸運であるかと思います。


卒団を意識するようになった頃から、卒団した今でも強く思います。
この三年半、本当に、身に余るほどに、貴重な経験をさせていただき、特別な時間を過ごさせていただきました。
月光斜の先輩や同期、後輩、そして活動の中で関わってきた全ての方々に、感謝の念が尽きません。


我々54期は卒団となりましたが、いつまでも、この劇団の公演の続くことを祈っております。
そして劇団月光斜と、これまで劇団に関わった皆様、観に来てくださった皆様との縁の途切れぬことを。


こんなところで、この公演後記の締めとしたいと思います。
最後になりますが、劇団月光斜2025年度卒業公演『パンドラの鐘』に御来場くださった皆様、遠くから応援してくださっていた皆様、誠にありがとうございました。
そして願わくば、これからも劇団月光斜をご愛顧いただけますよう、何卒よろしくお願い致します。

それでは。
25卒 パンドラの鐘集合写真①.jpg

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